今回は腹腔鏡下による鼠径ヘルニア根治術について投稿しようと思います
鼠径部を3〜4cm切開する方法と比較すると、腹腔鏡で行うことにより術後の疼痛を軽減でき血腫、神経損傷、慢性疼痛が少なくすみます
皮膚を切開する場所も5〜10mmの切開をだいたい3か所だけなので傷がそこまで目立つことがありません
両側の鼠径ヘルニアであっても同じ3か所のトロッカーから操作ができるので、両側であっても傷が増えることがありません
手術時間は鼠径部を切開する術式に比べると長くなりますが、患者さんにとってメリットの多い手術になります
今回はそんな腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術の手術時の看護師としておさえておきたいポイントをまとめてみました
適応疾患・症状
鼠径ヘルニアは一般的に外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアの3つに分けます
鼠径部のどの部分にヘルニアが存在するかによって、分けられます
膨隆以外の痛みや違和感を伴う症候性ヘルニアは一般的に手術の適応になります
症状としては、鼠径部に膨隆や、違和感、疼痛などを訴え医療機関を受診する方がほとんどです
鼠径ヘルニアならではの症状としては、立っている時に膨らみや違和感を感じ、横になると違和感などを感じなくなります
- 外鼠径ヘルニア
鼠径管のトンネルを通り、鼠径部の外側から出てくるヘルニアのこと、鼠径ヘルニアの中で1番多いです - 内鼠径ヘルニア
鼠径管を通らず、鼠径部の内側から出てくるヘルニアで、高齢の男性が多いです - 大腿ヘルニア
大腿管と呼ばれるソンネルを通り、鼠径部の下側から出てくるヘルニア、中年以降の女性に多く見られます。嵌頓ヘルニアになる可能性が高いとされています
鼠径ヘルニアの原因
加齢とともに筋肉、筋膜が脆弱になり内臓を支えることができなることで発症します
立ったり座ったりというような慢性的な鼠径部への圧力も鼠径ヘルニアの原因になります、その他には咳をよくする、喘息、便秘、排尿障害がある人なども鼠径ヘルニアを発症することが多いと言われています
また先天性のヘルニアもあります
手術の概要
- 麻酔方法
全身麻酔(+神経ブロック) - 術後合併症
血腫
再発
慢性疼痛:メッシュやタッカー使用による血腫や神経損傷で慢性的な疼痛が発生することがあります
手術の種類
- 腹腔内到達法(TAPP)
腹腔内までトロッカーを挿入し、腹腔内からアプローチする方法
視野が広く確保できるので、術中の操作がしやすい - 腹腔前到達法(TEPP)
腹壁と腹膜の間の層からアプローチする方法
TAPPのように広い視野を確保するのは難しいが、腹腔内の臓器に触れずに手術を行うことができる
手術の手順(TAPP)
- 皮膚切開・トロッカー挿入
3か所にトロッカーを挿入、傷は5〜10mm - ヘルニア門を確認・腹膜切開
腹腔内に腹腔鏡を挿入、観察しヘルニア門を確認する
超音波凝固切開装置などを使用して腹膜を切開し、鼠径床を露出していく - メッシュを当てる
露出した鼠径床にメッシュを当てタッカーで固定 - 切開した腹膜を縫縮
- 必要に応じて癒着防止材を散布
- 閉創
看護のポイント
腹膜縫縮時に気腹圧を変更することがある
腹膜を縫縮するときに、腹膜のテンションが高いと執刀医から気腹圧をもう少し下げてほしいとお願いされることがあるので、テンションがかかっていて縫縮しずらそうだったら気腹圧を下げられるように準備しておくといいと思います
メッシュには左右あり注意
実際私の働いている職場であった間違いなんですが、「Light Mesh」というメッシュの名前で、左右の「Right」と勘違いして右の鼠径ヘルニアの手術をしていた患者さんに左用のメッシュを出してしまった事例がありました。患者さんの腹腔内にメッシュを挿入する前に医師が気づいたので難を逃れました。
「Light」と「Right」気をつけたいですね
まとめ
現在私の勤務している病院では、TAPPしかしていませんが何年か前にTEPPをやっていました
TEPPは私も新人だったので記憶が曖昧なんですが、蜘蛛の巣をかき分けてヘルニアを修復していくというイメージでした
TAPPもTEPPもそれぞれメリット、デメリットがありますが看護師としては術後の合併症などを把握し術後訪問をしたり、患者さんが安全に手術を受けられるように援助し回復をサポートしていきたいですね
最後まで読んでいただきありがとうございました
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